イスラームにおける健康(4/4):運動
説明: 運動はムスリムの人生における不可欠な要素の一部です。
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 22 Apr 2013
- 編集日時 22 Apr 2013
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預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)は、強き信仰者は弱き信仰者に勝る、と述べています1。彼は信仰心と性格について述べたのですが、そこには身体的強さの意味もほのめかされています。つまり、神がそれを得ることをお許しになったのであれば、最適な健康状態と力強さを持つことは望ましいことなのです。イスラームによる人生、そして健康への包括的なアプローチは、私たちが力強く健康的であるための能力を提供します。もし神が、病気や怪我が私たちの人生の一部であるとされたのであれば、イスラームはそれらを受け入れ、さらにはそうした試練を感謝する手段と方法を提供するのです。
イスラームによる健康への包括的アプローチについてのシリーズ最終部であるこの記事では、イスラーム、預言者ムハンマド、そしてイスラーム学者たちが運動について述べることに関して検証します。これとは別のシリーズでは、私たちが病気や怪我に遭遇した際、いかに振舞うべきかについてイスラームが述べることを題材にしています。
イスラームの信仰者は、自身の精神的・感情的・肉体的健康を管理し、維持していかなければなりません。精巧な仕組みを持つ私たちの体は、神により信託されたものです。それは乱雑に扱われたり、蔑ろにされてはならず、きとんと好ましい状態に保たれなければなりません。既述されたように、健康的な食習慣と栄養の摂取は、最善の体調を維持するための大きな役割を担っています。運動習慣を取り込んだ生活スタイルもまた同様です。イスラームは、質素な食生活に運動習慣を組み合わせることを強調します。
イスラームにおける「5行」の義務を遂行するには、ムスリムが良い健康状態にあることが求められます。一日5回の礼拝もそれ自体が運動の動作であり、規定された動きには体中の筋肉と関節が関わり、礼拝における集中は精神的ストレスを緩和します。またラマダーン月の断食の達成や、数日間の過酷な肉体的奮励を要するマッカへのハッジ巡礼を行うにも、良い健康状態が必要となります。
預言者ムハンマドは彼の追従者たちに対し、働き、精力的であり、早起きするよう忠言しています。それらのすべては健康な身体にとっての条件でもあります。彼はこう述べています。「神よ、早朝の時間帯を私の共同体にとっても祝福としてください。」2肥満、不適切な食生活、怠慢、弱さはすべて、やがて私たちがその責任を問われることになるものです。病気や怪我の予防は私たちの能力の範囲外であることがしばしばですが、多くの場合においては食生活や健康に対する私たち自身の注意不足によってもたらされるものです。預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)はこのように述べています。「神の想念を伴わないいかなる行いも、次の4つ以外は逸脱行為か無頓着さである:(弓術の練習における)標的から標的への徒歩、調馬、家族との戯れ、水泳の練習である。」3
預言者ムハンマドと教友たちは、当然のことながら健康でした。生活は厳しく、長距離でも徒歩をし、男性たちは狩りと畑仕事もしました。そして当時は無用な娯楽などが存在せず、それによって怠慢となり多くの時間を無駄にするようなこともありませんでした。21世紀の現在、私たちの周りは怠惰や病気を助長する娯楽に満ち溢れています。
高度なテクノロジーには多くの利点がありますが、テレビやゲームによって時間を無駄にし、それによって健康を損ねたりしないことは重要です。子供の肥満率は、テレビの視聴時間の長さに比例することが証明されています。別の研究では、それが大人にも同様に当てはまることが示されています4。一方で、運動は多くの利益をもたらします。
運動は筋肉の張りを増加させ、柔軟性を向上し、持久力を高め、心臓を強化し、鬱病にも効果的です。また運動は体重の減少にも大きく貢献します。有酸素運動は心臓病と高血圧を予防し、糖尿病のリスクを減らします。ウエートトレーニングは筋力を高め、脂肪分を減少させ、骨密度を増加させ、関節炎への効果、そして精神衛生の向上に寄与します。
著名なイスラーム学者であるイブン・アル=カイイムは、運動は代謝を促し、免疫を高めると述べています。また彼は、身体器官にはそれぞれに適した運動があり、乗馬、弓術、格闘、競争は身体全体を益する運動であると述べています5。
運動はムスリムの人生における不可欠な要素の一部ですが、それが宗教的義務行為の妨げや、家族団らんを代償としたものであってはなりません。人生に対する包括的アプローチとしてのイスラームに適するよう、あらゆることは中庸でなければなりません。そこには極端さや、狂信的態度の余地はないのです。運動の習慣やスポーツが人生を乗っ取ってしまうようなことは、中庸性を掲げるイスラームの教えに反することです。また運動においては異性との不必要な混合、または覆われるべき身体の箇所があらわにされてもなりません。
イスラームは、それが罪とならず、有害でもなく、宗教的義務に差支えのない限り、心をリフレッシュし、身体に活力を与えるすべてのことを推奨します。預言者ムハンマドの伝統からは、健康的な生活習慣、同胞愛、そして家族の団らんを促進させるものが明確に激励されています。
サヒーフ・ブハーリーには次のような伝承が収録されています。「預言者は弓で射的の競争をしていたアスラム族の人々のもとを通りがかり、彼らにこう語りかけています。『的を射るのだ、(預言者)イシュマエルの息子たちよ。射なさい、私は何某(のチーム)と共にいる。』すると別のチームが射るのを止めました。預言者はこう尋ねます。『なぜ射るのを止めるのだ?』彼らは答えます。『あなたが彼ら(のチーム)と共にいるのに、どうして射ることが出来ましょうか。』すると彼は答えました。『射なさい。私はあなたがた皆と共にあるのだから。』」別の伝承では、預言者ムハンマドがこよなく愛した妻アーイシャが、彼らによる娯楽と競技への愛着について言及しています。彼女はこう述べています。「私は(ラクダの競争で)預言者と競い、彼に勝ちました。後年、私の体重が増えたときに再び競うと、彼が私に勝ちました。すると彼はこう言ったのです。『これでおあいこだ。』」6
真の信仰者は、人間の身体の驚異性を認識し、創造主に感謝します。こうした感謝の念は、最適な健康状態を維持しようとする関心や態度に現れます。イスラームによる健康への包括的アプローチは、精神・身体・心のすべての側面を含有します。健康への意識が本当に高い人物は、食習慣、栄養摂取、運動習慣を、神への想念、さらに宗教的義務行為のすべてを遂行しようとする意図に組み合わせるのです。
Footnotes:
1 サヒーフ・ムスリム
2 イマーム・アフマド
3 アッ=タバラーニー
4 この結果は、バッファロー大学、ジョン・ホプキンス大学、アメリカ国立癌研究所、アメリカ疾病管理予防センターの研究者らによって報告されています。Carlos J. DrPH, MS; Smit, Ellen, PhD; Troiano, Richard P., PhD, RD; Bartlett, Susan J., PhD; Macera, Caroline A., PhD; Andersen, Ross E., PhD (2001, March 15). Television watching, energy intake and obesity in US children. Archives of Paediatric and Adolescent Medicine, 155, 360-365.
5 ザード・アル=マアード
6 サヒーフ・ブハーリー
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