屠畜(3/4):気絶処理に対するイスラーム的裁定(1)
説明: 近代的な屠畜の手法と、イスラームにおいて義務付けられる手法との比較。第三部:屠畜における近代的手法がイスラームによって推奨されない理由の一つは、動物たちの感じる苦痛です。
- より M.アブドッサラーム
- 掲載日時 31 Dec 2012
- 編集日時 31 Dec 2012
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イスラームにおいて、屠畜の前に動物たちを気絶させることに対する明確な禁止はありません。しかし諸々の研究によって、気絶させることを避けることが最善であることが、以下のような理由ゆえ、判明しています。
苦痛
イスラームは、創造物すべてに対して慈悲を示すことを推奨する宗教です。イスラームでは動物たちに不必要な苦痛を与えることを禁じます。たとえそれが屠畜であっても、預言者はこのように述べています。
「屠畜をするときは、最善の作法でもって行うのだ。」(サヒーフ・ムスリム)
彼は、屠畜の前にナイフを研ぐことを命じました。
「ナイフを研ぎなさい。そうすることが屠畜される動物にとってより楽になるのだから。」(サヒーフ・ムスリム)
動物への慈悲と思いやりの精神は、彼が動物の前では決して刃物を研いだり、別の動物の前で屠畜をしてはならないと命じたことによって表されています。
「彼は、刃物を研ぐこと、屠畜をすることを、別の動物には見えない所でするように命じられた。」(アフマド)
別の伝承では、このように述べられています。
「預言者(神の慈悲と祝福あれ)は、下から見上げている羊の横面を足で(地面に)押さえつけながらナイフを研ぐ男の前を通りがかった。預言者はこう言われた。『それを事前に行うことは出来なかったのか? あなたはそれを何度殺すのか。』」1(アル=ムンズィリー)
家畜銃ピストルが効果的であるためには、非常に訓練された人物によって、特定の強さのカートリッジが使用されなければなりません。そうでない場合、あるいはピストルが正しい位置に打ち込まれなかった場合、動物は間違って打ち込まれた分の苦痛、そして再度打ち込まれる苦痛を味わうことになるか、または主張されているような意識のある中でのナイフの切り込みを苦痛を味わうことになるのです。もしも、動物が家畜銃ピストルなしに屠畜されるのであれば、苦痛は全く無いか、あるいは最小限に留められるのです。欧州科学委員会による1996年の報告では、「5〜10%の牛では、家畜銃ピストルが正しく使用されていなかった。」と記されています。VIVA(菜食主義者による動物愛護団体)によると、それは英国だけでも23万頭の牛に計算されます。FAWC(家畜福利組合)による報告では、「我々は屠畜場の視察にて、死骸の頭部にあるボルトの貫通箇所を綿密に検査した。我々としてみれば、推奨箇所とはかけ離れた部分に打ち込まれていたケースが非常に目立ち、また相当数の二重撃ちの証拠を発見した(つまり、第一撃が適切なターゲットを外していたことを意味しています)。」
同様のことが、頭部の電気ショックに対しても言えます。 RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)は、「一部の動物は電気ショックを受けた後、失血により死亡するまでに意識を回復していた科学的証拠が数多く存在しています。」と述べています。その原因としては、電気ショックの過程において、動物の脳に適切な電流が加えられなかったこと、また電気ショックによる気絶と切り込みの間隔が20秒を超えた場合、動物の意識が回復し始めることが挙げられます。
VIVAは頭部への電気ショックによる気絶効果は20〜40秒に渡って持続し、気絶から切り込みへの所要時間は羊の場合、最大70秒かかると説明します。このことは、失血によって死ぬ羊の内の5百万頭は、電気ショックによって気絶した後、意識を回復していたことを意味しています。
ブリストル大学で行われた研究でも、羊は電気ショックの直後には苦痛を感じないながらも、完全に意識のある状態が少なからず存在していることが示されました。さらに、意識不明が即座にもたらされる証拠は何もなく、神経生理学者のハロルド・ヒルマン博士のような一部の人々は、電気ショックは激痛を伴うこと、そしてそれが一部の国では囚人に対する懲罰として用いられていることを指摘しています。動物はこの強烈な電撃によって麻痺してしまうため、それによる激痛を鳴き声で表現することは出来ないのです。
不十分な電気ショックは、特にカモやガチョウなどの、水に浸される際に頭を上げる兆候があり、完全に頭部が水に浸されない動物の水槽気絶法においても発生します。この手法におけるもう一つの問題は、この手法は心臓麻痺を引き起こすことを目的とされながらも、RSPCAによると「多くの鳥の電気ショックは適切ではなく、屠畜前に意識が戻っている場合が多い」ことです。このことはスティッキングにおいても同様であり、動物たちは死ぬ前に意識を取り戻しているのです。
ガス処理における窒息の苦痛は、いかなる生き物にとっても至極明白であることから、そのことはあえて説明されるまでもないでしょう。
以上から分かるように、これらの手法は苦痛を軽減する目的であるとされるにも関わらず、電気ショックとそれが失敗した際の処置などを含め、現実には動物たちはより多くの苦痛を味わっています。繰り返しますが、動物に対する不必要な苦痛を与えることは、イスラームにおいては禁じられていることなのです。
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