クルアーンの紹介(パート1/2):その構成と意味

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説明: クルアーンとその構成における基本的要素、及びクルアーンとその訳の相違。そしてクルアーン英訳の簡単な展望と、クルアーン釈義という主題の紹介。

  • より IslamReligion.com
  • 掲載日時 17 May 2010
  • 編集日時 17 May 2010
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An_Introduction_to_the_Quran_(part_1_of_2)_001.jpgクルアーンはムスリムの啓典であり、つまりはイスラームを信奉する人々の啓典です。イスラームは、西暦7世紀初頭に使徒ムハンマドによって、当時アラビア半島内に広く分布していたアラブ人の間に定着した宗教です。クルアーンは天使ガブリエルを介し、神から使徒ムハンマドに啓示されました。そしてその一部は彼の故郷であるマッカにて下されましたが、また別の一部は、彼が無政府の部族社会とは打って変わった政府を樹立することに成功したマディーナにおいて啓示されました。啓示のメッセージは究極的には全人類を対象としたものですが、最初にそれが語りかけられた人々の言葉であるアラビア語で下っています。クルアーンはムハンマドが全人類に向けられた使徒であり、神から派遣された最後の使徒であることを明確に述べています。従って、クルアーンはムスリムだけのものではなく、ユダヤ教徒やキリスト教徒に定められた基本的宗教を確証し、かつそれらの代替という役割を果たす最終的メッセージなのです。今日、全世界のムスリム(イスラーム教徒)の総数は十億以上に上り、世界の全人口のほとんど5分の1を構成しています。クルアーンは、その言語や居住地域を問わず、全てのムスリム・コミュニティにとっての啓典なのです。

基礎

クルアーンについてまず理解すべきことは、その形式です。「クルアーン」というアラビア語は、逐語的には「朗誦すること」と「読むこと」両方の意味を含んでいます。そしてその通り、クルアーンは口頭で朗誦され、かつ書式で書き留められたものです。そしてクルアーンは、そもそも声に出して美しい旋律をつけて読むものとされているゆえ、その真の威力は口頭における朗誦の中にあります。そしてその一方で、クルアーンの章句はその暗記と保存の一助となるべく、利用可能なものに筆記されました。それらは個人的に、及び後の段階においては公共事業の枠内において収集され、書物の形態で編纂されました。またクルアーンは、年代順の物語を語りかけるためのものではなく、ゆえに創世記のような時代順に配列された伝承として見られるべきではありません。クルアーンと呼称することの出来るアラビア語の書物は、新約聖書ほどの長さです。そしてほとんどの版において、約600ページからなっています。

クルアーンは、ヘブライ語の聖書や新約聖書とは対照をなしており、天使ガブリエルから聴いたものを朗誦した唯一人の人物の口から発されたものです。他方、ユダヤ教及びキリスト教の啓典は、多数の人間によって書かれた書物と諸々の意見の集合体なのであり、それらは啓示の際の状態とは異なったものなのです。

クルアーンはいかに構成されているか?

クルアーンは、様々な長さからなる114の部分、あるいは章から成立しています。各章はアラビア語で「スーラ」と呼ばれ、一方クルアーンの各文、あるいは各節は「アーヤ」と呼ばれます。また聖書と同様、クルアーンは英語でいう節にあたる個別の単位に分割されています。これらの節は長さや韻律において決まった基準がなく、その始まりと終わりは神によって指定されたものであり、人間によって決定されたものではありません。各節は、節の終わりを示す慣用語か、あるいはアラビア語の「アーヤ」という単語によって示される印によって、個別の働きを果たします。クルアーンにおける最短のスーラは10の語からなり、一方最長のものは第二番目に配置されたスーラで、6100語からなります。また第一番目のスーラは「アル=ファーティハ章(開端章)」で、比較的短い章です(25語)。そして第二番目のスーラから先に進むにつれて、各スーラは徐々に短くなりますが、これが固定化された不変の法則というわけではありません。最後の60スーラを全部合計した紙面は、第二番目のスーラ(雌牛章)一つと同じ位の紙面を占めています。またある種の長いアーヤには、最も短いスーラよりずっと長いものもあります。そして全てのスーラは、唯一つのスーラを除いて、「ビスミッラーヒッラフマーニッラヒーム(慈悲遍く、慈悲深き神の名において)」という言葉から始まります。また各スーラの名称は、通常その中に含まれているキーワードに言及しています。例えば、最長のスーラであるアル=バカラ章(雌牛章)は、ユダヤ教徒らに雌牛の犠牲を屠るよう命じたモーゼの説話から、その名称を取られています。そのアーヤは、このように始まります:

「そしてモーゼがその民に、こう言った時のこと:“神は、あなた方が一頭の雌牛を(犠牲として)捧げるよう、ご命じになられる・・・”」(クルアーン 2:67)

クルアーンの諸々の章は異なった長さであったため、預言者ムハンマドの死後の最初の1世紀の内に、学者たちによって大まかな30部に分割されました。この各部分をアラビア語で、「ジュズ」と呼びます。クルアーンのこの分割法は、人々がより組織化された形で暗記、あるいは読誦出来るようにと発案されたものです。それらは、ページの横でその箇所を示す単なる印にしか過ぎないのであり、クルアーンの本来の構成にまで影響を及ぼしてはいません。ムスリムにとっての断食の月であるラマダーン月(ヒジュラ暦9月)には、毎晩の礼拝で通常1ジュズが朗誦されます。そして30日を終える頃には、全クルアーンの読誦が終了することになるのです。

クルアーンの翻訳

初心者の方は、クルアーン訳についていくつかの点を知っておかなければなりません。

まず、クルアーンとその訳には区別があります。キリスト教的視点においては、聖書はいかなる言語に訳されようと聖書であることに変わりはありません。しかしクルアーンは天使ガブリエルを介し、神によってその使徒ムハンマドに啓示されたアラビア語で語られた言葉ですから、その外国語訳は神の御言葉とは見なされません。神の御言葉は、アラビア語のクルアーンのみなのです。神はこう仰っています:

「実に、われ(神)はそれをアラビア語のクルアーンとして下した。」(クルアーン 12:2)

ゆえにクルアーン訳は、クルアーンの意味に関する単なる説明に過ぎないのです。クルアーンの現代英語訳に、「聖クルアーン訳」と題名がつけられているのは、こういう訳です。クルアーンの翻訳はそれに対する意味理解の努力を払っているに過ぎず、本来の聖典の形式を再現することは‐それがいかなる翻訳であっても‐到底不可能なのです。翻訳されたクルアーンのテキストは、原本の比類なき性質を失わせてしまいます。ゆえに本来のメッセージを他言語に反映させようとするクルアーン訳の程度については、注意が必要でしょう。それらが原本の意味と完全に合致することは、恐らくないからです。こういった理由から、クルアーンの朗誦と見なされるもの‐例えば、ムスリムにとっての毎日5度の礼拝におけるクルアーン読誦など‐は、アラビア語のみに限定されるのです。

第二に、クルアーンの完璧な訳は存在しません。それは人間の手仕事であることから、非常に頻繁に間違いを伴うものなのです。もしかするとある訳は語学的特性において優れ、別の訳はその意味の描写の正確さにおいて特筆すべきものがあるかもしれません。また主流のムスリムたちによって認定されていない、不正確で、時々誤解さえも与えてしまうような多くのクルアーン訳も、、市場に出回っています。

第三に、全ての英訳クルアーンを再検討することはこの記事の射程範囲外にありますが、ある訳は他のそれに比して推奨されます。最も広く読まれている英訳クルアーンは、アブドッラー・ユースフ・アリー訳です。そしてそれに次ぐのが、英国人ムスリム初のクルアーン訳である、ムハンマド・マルマデューク・ピックサール訳です。ユースフ・アリー訳は一般的に言って容認されるレベルのものですが、しかし脚注内の彼のコメントは時に有益、かつ時には風変わりで、受け入れられない場合もあります。また別の広く読まれている訳として、ヒラーリー博士とムフセン・カーン訳「崇高なるクルアーンの意味解釈」があります。これは最も正確な訳であると目されていますが、多くのアラビア語用語の音訳と非常に長い挿入句のせいで、初心者にとっては読み進めるのが困難で混同しやすいものになっています。この新版がサヒーフ・インターナショナル社によって出版されていますが、これはより流暢なテキストで、かつ翻訳の正確さと読み易さを両立していることから、恐らく現存する最善の英訳クルアーンであると言えるかもしれません。

クルアーン釈義(アラビア語のタフスィール

クルアーンの意味は理解し易く明確です。しかし宗教において、正統かつ信憑性のある解説に依拠することなしに何らかの主張をすることには、気をつけなければなりません。預言者ムハンマドはクルアーンを携えて到来しただけではなく、それを彼の教友たちに説明もしたのです。そしてこれらの言葉は収集され、今日に至るまで保存されています。神はこう仰りました:

「そしてわれら(アッラーのこと)は、あなた(ムハンマド)にメッセージ(スンナ:ムハンマドの言行)を下した。それはあなたが、人々に下されたものを明確に説明するためなのである・・・」(クルアーン16:44)

またクルアーンのより深い意味を理解するためには、使徒ムハンマドとその教友たちのこれらの言葉を扱う注釈書に依拠するべきです。そして、自分自身の文章理解のみに依拠するべきではありません。というのも彼らのクルアーンの文章に対する理解力は、その秀でた知識の枠内に限られたものだからです。

クルアーン釈義には、その適切な意味を汲み取るにあたり、特定の手法があります。一般的に言われる「クルアーン学」はイスラーム学の非常に専門化された分野であり、そこにおいては多様な規則‐釈義学、朗誦学、書体学、クルアーンの奇跡、啓示の下った背景、無効化されたアーヤ、クルアーン文法学、特異な用語、宗教的規定、アラビア語・文学など‐に精通していることが要求されます。尚、クルアーン釈義学者によれば、クルアーンのアーヤを解釈する適切な手法には、以下のようなものがあります:

(1)クルアーン自身によるクルアーン釈義。

(2)預言者ムハンマドのスンナ(言行)によるクルアーン釈義。

(3)預言者の教友たちによるクルアーン釈義。

(4)アラビア語学的見地からのクルアーン釈義。

(5)私見によるクルアーン釈義。但しその正当性は、上記の4つの源泉から導き出されるものに矛盾しないことが条件付けられます。

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