預言者ロトの物語(後半):ソドムの破滅
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 03 Feb 2014
- 編集日時 03 Feb 2014
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預言者ロトは、周囲の人々の邪悪な行いや不道徳な態度によって害を被っていましたが、忍耐強く教えを説き続けていました。彼は人々に生き方を改め、唯一なる神に従いつつ崇めるよう呼びかけました。しかし、街の人々はロトを愚弄して嘲笑し続けただけでなく、神の懲罰を見せてみるよう彼に挑みました。
“あなたが真実を言うのなら、わたしたちにアッラーの懲罰を齎してみなさい。”(クルアーン29:29)
ロトは深く失望し、こうした罪深い不道徳な者たちへの勝利を授けてくれるよう神に懇願しました。
ロトが祈りを捧げていたとき、使徒(天使)たちは預言者アブラハムと共におり、彼らはアブラハムにロトとその民に対する彼らの使命について告げ知らせました。彼らはこう言いました。
“わが使徒(天使)たちが、吉報を持ってイブラーヒーム(アブラハム)の許に来た時、かれらは言った。わたしたちは、この町の人びとを滅ぼそうとするところである。本当にここの住民は、悪を行う者たちばかりである。”(クルアーン29:31)
もうじき破滅を迎えるであろうソドムの街に甥のロトがいることを知ったアブラハムは、天使たちにこう言いました。“しかしそこにはロトがいます!” すると彼らは言いました。
“わたしたちは、誰がそこにいるかを熟知している。落伍者であるかれ(ロト)の妻の外は、かれもその家族をも必ず救うであろう。”(クルアーン29:32)
著名なイスラーム学者、イブン・カスィールによると、使徒たちがソドムの街に近づくと、かれらは近くの川でロトの娘に遭遇しました。彼女はかれらの美しさに驚愕し、怖れさえ感じた程でした。彼女は預言者ロトの許可なしにかれらが街に入る代わりに彼を直接連れてくるので、川で待っているよう彼らに告げました。よそ者について知ったロトは、いかにして彼らを街に入らせずに遠回りさせ、彼らの旅を続行させることが出来るかについて頭を悩ませ、考え込みました。彼は使徒たちに街の人々の性質を理解させようとしましたが、街に入る前に一晩だけ待機させるということしか彼らを説得出来ませんでした。
預言者ロトは、安全な彼の自宅に使徒たちを何事も無く連れ込むことに成功しました。しかし、ロトの妻は裏口から忍び出し、ロトの家に二人の美しい男性がいることを人々の告げたのです。噂は瞬く間に広まり、やがて人々はロトの戸外に集まり、扉を叩いて彼の客人を見せてくれるよう要求していました。扉の外に集まった群衆の原因が彼の妻であることを悟ったロトはひどく苦悩しつつも、群衆に神の懲罰を怖れ離散するよう頼みました。彼は彼らに対し、性的欲求を合法的な方法によって満たすよう何度も訴えかけました。
“わたしの人びとよ、ここにわたしの(民の)娘たちがいる。あなたがたにとっては(彼女たちと合法的に結婚することが)最も清浄である。アッラーを畏れなさい。わたしの賓客に関して、わたしに恥をかかせないでくれ。あなたがたの中に、正しい心の者が一人もいないのか。”(クルアーン11:78)
ロトの物語は、バイブルとクルアーンの双方に収められており、大部分が共通しています。ただしイスラームでは、預言者ロトが自らの娘を差し出したという考え方が否定されています。イスラーム学者たちは、ロトが「娘たち」という言葉を使ったのは、ソドムの民の女性たちの意味でそうしたと説明しています。彼は、ソドムの民の男性たちが、合法的婚姻を通して性的欲求を満たすよう求めていたのです。
イブン・カスィールはその著書「諸預言者の物語」において、街の人々はロトの扉を破壊してなだれ込み、使徒たちを包囲したと述べています。ロトは彼らの前に為す術がありませんでしたが、彼らに対して引き続きその悪業を戒めていました。街の人々は嘲笑しながら言いました。“わたしたちがあなたの娘たちに、求める気のないことを、あなたはよく知っているはずである。またわたしたちが望むものもあなたに分かっている。”(クルアーン11:79)使徒たちはロトを安心させるためこう言いました。“ルート(ロト)よ、本当にわたしたちは、あなたの主の使徒である。”(クルアーン11:81)その言葉を聞いた街の人々は怖れを感じて解散し始め、そこにはロトの家族と使徒(天使)たちだけが残りました。
使徒たちは預言者ロトの恐怖を和らげると、彼の家族と支度を整えてその日の夜のうちにソドムの街から出るよう指示しました。ロトは家族の後方を歩き、誰一人としてソドムの街を振り返ったりしないようにしました。ロトの妻は街に残り、他の不義者や罪人たちと共に懲罰を受けることになりました。クルアーンはその懲罰について、恐ろしい叫び声と共に街が転覆され、泥の焼け石が降り注いだと述べます(クルアーン15:73−74)。
懲罰は日の出と共に訪れました。神はこう述べます。
“それでわれは、かれとかれの家族を凡て救った。後に残った、老女(ロトの妻)は別であったが。それから、われは外の者を滅ぼした。われは、(石の)雨をかれらの上に降らせた。警告されていた者たちには、災厄の雨であった。本当にこの中には、一つの印がある。だがかれらの多くは信じない。”(クルアーン26:170−174)
このようにして、ロトの民についての幕が閉じられています。彼らは、歴史の一ページからその名を抹消されたのです。神の約束通り、ロトが警告した懲罰は実現しました。神の約束が反故にされることは決してありません。神は、不義者へは厳しい懲罰を、実直な者たちへは天国を約束されています。ロトが家族と共に朝焼けの中に歩みを重ねたとき、クルアーンはそこで彼らについての言及を終えるのです。
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