預言者ヨブの物語

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説明: 全能なる神に完全に服従した、忍耐強き預言者ヨブの物語。

  • より アーイシャ・ステイシー
  • 掲載日時 10 Feb 2014
  • 編集日時 17 Mar 2019
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The_Story_of_Prophet_Job_001.jpg神によって人類に遣わされた預言者たちの情報は、クルアーンにおける114章全般から見出すことが出来ます。その情報は様々な方法によって提示されます。短い章句から、預言者ヨセフについての章全体まで、様々です。さらに、ほぼ例外なく、預言者たちは特定の人々のもとに同じメッセージを携えてやって来ます。彼らは、人々が唯一なる神のみを崇め、崇拝において何者も神に並べないことを命じたのです。預言者たちの物語は、神は唯一であるという、イスラームの根本的な教えを強調するのです。

クルアーンは、子女と富が現世における飾りであり、それらへの愛情について私たちが試練を受けることを明らかにします(クルアーン18:46)。預言者の物語において、神は様々な民族に対し、健康や富の喪失、あるいは極度の貧困によって試練を与えたことが分かります。神は悔悟と忍耐が来世における永遠の命の鍵であることを宣言しており、試練を受け入れ、それらについて神への感謝を忘れないことは、信仰心の高さを示します。しかし、人間は神の教えを受け入れることに関し、常にもがき苦しむものです。多くの民族は失敗しました。

ヨブの物語は異なります。彼の逸話を通し、私たちは人間の労苦をより個人レベルで見ることが出来ます。神はヨブによる宣教の手法や、いかに人々が彼の警告を拒絶したかについては言及されません。神は、ヨブの人々の辿った運命についても述べてはいません。その代わり、神はヨブの忍耐について言及されます。神にこのように述べてヨブを称賛します。

“われは、かれが良く耐え忍ぶことを知った。何と優れたしもべではないか。かれは(主の命令に服して)常に(われの許に)帰った。”(クルアーン38:44)

キリスト教徒もヨブの忍耐については頻繁に言及しますが、興味深いことに、ムスリムも同様にヨブの忍耐に触れ、彼を逆境における模範とします。西暦10世紀の著名なイスラーム学者であるイブン・カスィールは、ヨブに関して残存していた情報を収集しています。以下はイブン・カスィールが著した「預言者物語」からの、クルアーン、そして預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)にまつわる真正の伝承に基づいたヨブの物語です。

ヨブはノアの子孫でした(クルアーン6:84)。彼は神を愛し、崇拝し、揺るぎない忍耐をし、たびたび赦しを請い願いました。サタンは天使の集団が、ヨブがその世代における最善の人物であることについて語り合うのを耳にしており、そのどす黒い心を嫉妬と憎悪に燃え上がらせています。サタンの策略とは、ヨブを善行から遠ざけ、彼を不信仰と腐敗に染めることでした。サタンはヨブを礼拝から背かせようとしましたが、ヨブは一貫して集中力を途切らせることなく献身的な礼拝を捧げ続けました。

このことはサタンの憎しみを増加させ、ヨブが献身的な崇拝を行っていたのは神が「彼に富と所有物という祝福を授けたからに過ぎないから」とサタンは神に不平を述べました。神はサタンとその取り巻きがヨブの所有物を破壊するのを許しましたが、ヨブは信仰を失わず、神こそが御望みのままに富や所有物を与え、奪うことが可能な唯一の御方であるという認識を示したのです。サタンはさらに鬱憤を募らせ、ヨブには幸せな大家族があるから無念さを隠すことが出来たのだと神に告げました。サタンとその取り巻きはヨブの家を破壊し、その崩落によってヨブの子供たちは全員死んでしまいました。

再び、ヨブは神に慰めを求めて立ち返り、この最も重い試練に対しても不平一つ言わずに受け入れました。サタンは老人の姿に扮装してヨブに近づきました。老人はヨブに同情心を示し、神は彼の献身や礼拝に報いていないのではないかと教唆しましたが、ヨブは神が「時に与え、時に奪う」のだとし、自身の創造主に満足していると述べました。サタンは激しい怒りを静かにくすぶらせました。サタンは神に「ヨブは丈夫で健康なため、富を再び稼ぎ、より多くの子女を設けることの出来る希望があるのだ」と告げました。サタンはヨブの健康を破壊する許可を求めました。神はサタンの3度目の要求に許可を与えましたが、それはサタンがヨブの魂、心、そして知性に影響力を及ぼさないことを条件としたものでした。

神の御意により、サタンとその取り巻きはヨブの身体に危害を加え始めました。彼は皮膚と骨だけのやつれた状態となり、激痛に苦しみました。またヨブは人々が嫌悪して顔を背けるような病気にも見舞われ、彼の友人や親族は彼から離れていくようになりました。彼の妻だけが彼のもとに留まりました。2人は一文無しとなり、僅かな量の食事を口に運ぶだけのために彼女は召使いとして働かなければなりませんでしたが、彼女は彼の世話をし、絶えず優しさを注ぎました。

これら一連の試練を通して、ヨブは神への従順さを貫きました。彼の唇と舌は神への唱念に勤しみ、決して絶望したり不平を述べたりしませんでした。彼は大きな災厄が降りかかったにも関わらず、神に感謝し続けたのです。サタンは呆然とし、ヨブを神への献身から逸らすことが出来なかったことから、今度はヨブの妻へとターゲットを変更しました。彼は男性の姿になり、過去のこと、そして以前の人生がいかに容易であったかを彼女に思い起こさせました。彼女はヨブのもとへ行き、涙ながらにこう訴えました。「あなたの主に、この災難を取り除いてくれるよう頼んでください」

ヨブは悲しくなり、神が彼らに富、子女、そして健康を80年間に渡り祝福してきたこと、そしてこの災難は比較的短期間に過ぎないことを彼の妻に思い出させました。彼は災難の除去を神に頼むことは恥ずかしいことだと言い、もしも彼の健康が回復したのなら、彼女を100回打つだろうと誓って叱り付けました。ヨブの妻は悲しみに打ちひしがれ、家を出ていきました。ヨブは自分の無力さに失望して神に立ち返り、不平を述べる代わりに慈悲を求めました。

“「本当に災厄がわたしに降りかかりました。だがあなたは、慈悲深いうえにも慈悲深い方であられます。」それでわれはこれに応えて、かれに取り付いた災厄を除き、かれに家族を授け、その人々を倍加した。(これは)われからの慈悲であり、またわれに仕える者に対する訓戒である。”(クルアーン21:83−84)

神は、間もなくしてヨブの健康を回復させました。ヨブの妻は、愛する夫から離れていることに耐えられなくなり家に帰ると、彼が回復しているのを見て驚愕しました。彼女は大声で神に感謝しましたが、ヨブは不安になりました。彼は彼女を打つと誓っていたからです。彼は彼女を心から愛していたため、彼女を打つことを望んではいませんでした。神は忠実で忍耐強いしもべの心に平穏を与えることをお望みになり、こう述べられました。“「一握りの草を手に取って、それで(妻を)打て。あなたの誓いを破ってはならない。」”(クルアーン38:44)

預言者ムハンマドにまつわる伝承から、神がヨブの富も回復されたことも分かっています。ある日、彼が沐浴をしていたとき、神は彼の上に金で出来たイナゴを降らせたと言われています。神はヨブの忍耐に豊富な報奨をされたのです。彼の健康は回復し、彼の家族は彼のもとに戻ってその数をさらに増やし、彼は再び裕福な人物となったのです。

神は、ヨブの物語が私たち皆にとっての助言であると述べています(クルアーン38:84)。人が完全なる服従によって神を崇拝するのであれば、それには忍耐が必要になります。数日もしくは数週間に渡って崇拝をすることは容易ですが、それは継続的なものでなければなりません。夜間の礼拝には忍耐が必要とされ、断食には忍耐が必要とされ、試練や苦難の中で生きることには忍耐が必要とされるのです。現世の人生は試練であり、その試練に合格し、楽園の報奨を勝ち取るためには、ヨブのような忍耐を身に付けることが必要とされるのです。



Footnotes:

サヒーフ・ブハーリー

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