ヨセフの物語(6/7):夢の重要性
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 27 May 2013
- 編集日時 28 May 2013
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預言者ムハンマドは述べています。「すべての預言者たちは彼らそれぞれの民に遣わされたが、私は全人類へ遣わされたのだ。」神はヤコブの息子ヨセフをエジプト人に遣わし、観測可能な奇跡で彼を手助けすることにより、人々が彼を神によって遣わされた導きであることを認識し易くしました。ヨセフの時代は、夢とその解釈が非常に重要視されており、そのことはヨセフの物語においても明白となっています。預言者ヤコブ(ヨセフの父親)、獄中の仲間、そしてエジプト国王は皆、夢を見ています。
国王がヨセフによる夢の解釈を耳にしたとき、彼は驚愕し、ヨセフを釈放しました。しかしながら、ヨセフは自身が無罪であることが明確にされない限り、牢獄から出ることを拒みました。彼は自分が信頼を裏切ったりはしなかったことを、主人であるアズィーズに確信して欲しかったのです。ヨセフは国王が、関係者の女性たちの調査をするよう丁重に要求しました。国王はそのことに関心を持ち、アズィーズの妻とその仲間たちを呼び出しました。
“かれ(王)は、(婦人たちに)言った。「あなたがたがユースフ(ヨセフ)を誘惑した時、結局どうであったのか。」かの女たちは、「アッラーは完全無欠であられます。かれには、何の悪いこともないのを存じています。」と言った。アズィーズの妻は言った。「今、真実が(皆に)明らかになりました。かれを誘惑したのはわたしです。本当にかれは誠実(高潔)な人物です。」”(クルアーン12:51)
ヨセフは無実が証明されると、国王の前に現れました。ヨセフの話を聞いた後、国王はさらに感銘を受け、ヨセフを高官として任命しました。ヨセフは言いました。“わたしをこの国の財庫(の管理者)に任命して下さい。わたしは本当に知識ある管財者です。”(クルアーン12:55)イスラーム宗教において、自らのために権力の座を求めたり、傲慢な話し方をすることは許されていません。しかし、ヨセフが国王に財庫の管理者の職を求めたとき、彼はそれらの双方を行ったのです。
イスラーム学者たちの説明によると、その地位に相応しい者が他に誰一人としていないときであればそれは許され、その地域における新参者なのであれば自ら立候補することも出来るとされています。ヨセフはエジプトに訪れるであろう試練のこと、そして飢饉による危機を回避させる能力があることを知っていたのです。ヨセフにとって、この職務を求めないことは無責任となるでしょう。井戸の中に放り込まれた少年は今、エジプトの財務大臣としての地位を築きました。彼の忍耐と努力、そして何よりも神の御意への完全なる服従は、既に結果として大いなる報奨をもたらしました。しかし、ヨセフは忍耐と誠実さに対する最大の報奨は、来世にこそあることを知っていました。
兄弟たちとの再開
時が過ぎました。ヨセフは7年間に渡って飢饉への準備を進めました。ヨセフによって的確に予言された旱魃と飢饉は、エジプトだけではなくヤコブとその息子たちが住んでいた地域をも襲いました。ヨセフによる手腕は卓越しており、エジプトには国内だけでなく、周辺地域の人々を養うだけの蓄えがありました。食糧の供給不足に陥った周辺地域の人々は、ヨセフが適正な価格で売っていた穀物を求めてエジプトに押し寄せました。
それらの食糧を求めてやってきた人々の中には、ヨセフの年長の兄弟たちもいました。ヨセフの前に連れて来られたとき、彼らはヨセフに気が付きませんでした。ヨセフが兄弟たちを認識すると、彼は父親と弟のベニヤミンが心から恋しくなりました。彼は敬意をもって彼らに挨拶し、彼らの家族と故郷について尋ね、穀物が一人あたりに対して配給されること、つまりもし彼らが末弟を連れてくればより多くの配給を得られることを告げ知らせました。ヨセフは彼らがベニヤミンを連れてくることを望んでおり、彼らが末弟を連れてこなければ彼らへの配当は全く無いとさえ言ったのです。
“もしあなたがたがかれを連れて来ないなら、あなたがたはわたしの所で(穀物を)計ってもらえず、わたしに近付くことも出来ない。”(クルアーン12:60)
彼らが父親である預言者ヤコブの元に戻った際、末弟を連れていかないことには穀物が全く配給されないことを伝えました。ベニヤミンはヨセフの失踪後、特に父親に懐いており、ヨセフを失った当時のことを思い出したヤコブはベニヤミンがいなくなってしまうことを怖れました。兄弟たちは末弟の安全を約束しましたが、ヤコブの心には不安が生じました。
ヤコブは完全に神を信頼しており、彼らがベニヤミンを守ることを神の御名において誓わせた後、連れていくことの許可を与えました。預言者ヤコブは、ヨセフとベニヤミンの二人に対して特に親密でしたが、息子たち全員を深く愛していることに変わりはありませんでした。彼らは皆力強く、外見も良く、有能で、ヤコブはエジプトまでの行程において、彼らに何らかの危害があるのではないかと怖れたのです。危険に晒されるのを防ぐため、彼は息子たちに異なる門から町に入るよう約束させました。ヤコブは言いました。
“息子たちよ、(町に入る時は皆が)1つの門から入ってはならない。あなたがたは別々の門から入りなさい。だが(この用心は)、アッラーに対しては、あなたがたに何も役立たないであろう。裁定は、只アッラーに属する。かれにわたしは信頼した。凡ての頼る者は、かれにこそ頼るべきである。”(クルアーン12:67)
兄弟たちはエジプトに戻り、異なる門から町に入ると、約束通りヨセフのもとへ行きました。このとき、ヨセフはベニヤミン一人を個別に呼び、自分が長らく離れ離れになっていた彼の兄であることを打ち明けました。二人は歓喜し、抱擁しました。しかし、ヨセフはベニヤミンに対し、このことをしばらくの間は内密にしているよう求めました。兄弟たちに穀物を支給したあと、ヨセフは金の器をベニヤミンの手荷物の中に忍ばせ、手配通りに誰かにこのように叫ばせました。“隊商よ、あなたがたは確かに泥棒です。”(クルアーン12:70)
兄弟たちは何も盗んではいなかったため、仰天しました。彼らは何が盗まれたのかを問うと、それが国王の所有する金の器であることを知り愕然としました。彼らは、それを返却した者に、ラクダの積み荷一杯分の穀物が与えられることを知らされました。ヨセフの兄弟たちはその窃盗については何も知らないことを主張しました。彼らは自分たちが盗人ではないこと、そしてエジプトに来たのはそういった目的からではないことを断言しました。ヨセフの従者の一人が尋ねました。「あなたがたの地における、盗人に対する処罰は何ですか?」兄弟たちは、預言者ヤコブの法においては、盗人は奴隷とされることを述べました。ヨセフは兄弟たちをエジプトの法律で裁きたかった訳ではなく、その機会を狙って彼の弟を自分のもとに留まらせたかったのです。手荷物検査がされると、金の器はベニヤミンの手荷物から発見されました。
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