イスラームにおける罪と罰(4/5):同害報復と任意懲罰
説明: 社会の犯罪に対し、イスラームが定めた規定の詳細について説明します。第四部:第二番目の懲罰の形式である同害報復と任意懲罰、それらの対象となる犯罪の種類、またその背後に隠された英知について。
- より アブドッラフマーン・アル=ムアラー博士編集部
- 掲載日時 22 Nov 2010
- 編集日時 22 Nov 2010
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2.同害報復
これはイスラーム法における第二番目の懲罰の種類です。ここでは、犯罪者が被害者に加えた傷害と同じものを受けることになります。犯罪者が被害者を殺害したのであれば、彼は処刑されます。もし彼が被害者の身体の一部を切り落としたか負傷させたのであれば、犯罪者を死に至らしめる恐れがない限り、彼自身の身体の一部も切り落とされるか、あるいは負傷させられます。そして専門医がこの決定を下すことになります。
同害報復に関する重要な規則
1.同害報復は殺害や傷害が意図的に行われたのでない限り、合法ではありません。偶発的に起きた殺傷には同害報復が行われません。神は仰せられています:
“信仰者たちよ、あなたがたには殺害に対する報復が定められた・・・”(クルアーン 2:178)
またかれはこうも仰せられています:
“・・・傷害には(同様の)報復を・・・”(クルアーン 5:45)
2.犯罪者が他人に直接危害を加えた場合、イスラームでは被害者またはその家族に、懲罰の執行を決定することの出来る重要な役割を与えます。またイスラームは、被害者が加害者に恩赦を与えることを許可します。なぜならこれらの犯罪に対する懲罰は、被害者の権利であるとみなされているからです。実際にイスラームは恩赦を推奨し、そうする者に対しての来世での報奨を約束しています。神は仰せられています:
“しかしその報復を控えて許すならば、それは自分の罪の償いとなる。”(クルアーン 5:45)
恩赦は、規定された金額による血の代償金の支払い、または代償の全く発生しないもののどちらかとなります。神は仰せられています:
“あなたがたは(それを)辞退するのが最も正義に近い。”(クルアーン 2:237)
3.この懲罰は政府により実行されなければならず、被害者の家族が執行することは許されません。
同害報復の背後に潜む英知:
広義におけるイスラーム的懲罰、そして具体的に同害報復刑においては、二つの補足的な性質を認めることが出来ます。そのうちの一つは、懲罰の厳しさです。これは犯罪を思いとどまらせ、その発生を抑えるためです。
二つめの性質とは、罪の確定の困難さ、そして刑罰執行の機会を減らし、被疑者を保護するものです。この文脈において、刑罰は疑いのある場合には撤回され、被疑者には常に「疑わしきは罰せず」という姿勢が適用されるのです。さらに、公道上における強盗の場合にみられるように、規定刑罰の一部は悔悟によって撤回されるものもあります。これは、同害報復刑における恩赦の件、そして恩赦が推奨・優先されているという事実からも見てとることが出来ます。
これら二つの要素がお互いを補足し合うのは、それらが犯罪を思いとどまらせ、社会を保護し、被疑者の権利は推測と告発のみが刑罰執行の根拠とされないよう保証され、彼らには大いなる公正さと、刑罰の免除が可能な限り許されることからも明確となっています。大半の人々は刑罰の厳重さから犯罪を避けますが、それらの犯罪の刑罰執行を見るのも稀なことなのです。このようにして、社会一般の安全と人権が同等に実体化しているのです。
3.任意の懲罰
神あるいは個人の権利を侵害するこれらの懲罰はイスラーム法によって規定されておらず、特定の懲罰や償いもありません。
任意の懲罰は最も広い範疇をカバーする懲罰です。なぜなら規定刑罰に該当する犯罪はごく僅かなものであり、その他のすべての諸犯罪はこの範疇に当てはまるからです。
そしてこれらは社会のニーズや情勢の変化を考慮に入れるため、最も柔軟なタイプの懲罰です。従って、これらは社会一般にとって最も有益なことを実現する柔軟性を有し、犯罪者を更生させ、彼らの与える害を低減させるのです。
イスラーム法は異なる種類の任意懲罰を有し、それらには勧告・叱責、鞭打ち、罰金、投獄などが含まれます。これらの任意の法令は、イスラーム法の枠組みにおける法的権威、そして犯罪から守られるべきである社会の権利と自由を守られるべき個人とのバランスを保つ、イスラームの普遍的目的の判断に委ねられるのです。
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