「ネーション・オブ・イスラーム」の問題点(前半)

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説明: ルイス・ファラカンに対する英国への15年間の入国禁止が裁判所によって撤回されたことにより、いわゆる「ネーション・オブ・イスラーム」の存在が報道機関によって大々的に報道されました。「ムスリム」を自称する彼らを、マイケル・ヤングがイスラーム的観点から検証します。

  • より マイケル・ヤング
  • 掲載日時 16 Feb 2015
  • 編集日時 16 Feb 2015
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イスラーム信仰の基盤

What_s_in_a_name_-_The_Problem_with_the__Nation_of_Islam__(part_1_of_2)_001.jpgもし誰かが、ある団体の名称にイスラームの文字が入っているのを目にすれば、そのメンバーがムスリムであると勘違いしたとしても仕方が無いことでしょう。しかし、「ネーション・オブ・イスラーム(イスラーム国家)」と自称する団体があれば、用心深くなってしまうのは必至です。人がムスリムであるためには、神学的な基本信条に則っていることが条件だからです。ムスリムの信仰証言は、以下のものとなります。

“私は唯一なる神以外の神はなく、ムハンマドが神の使徒であると証言します。”

この証言について説明すると、人がムスリムであるためには神が唯一無二の存在であることを信じていなければならないということです。神には同位者、援助者、子はなく、人間の姿になったこともありません。クルアーンの112章はそのことを明確にします。

“言え、「かれはアッラー、唯一なる御方であられる。

アッラーは、自存され、

御産みなさらないし、御産れになられたのではない、かれに比べ得る、何ものもない。」”

イスラームにおいて、神に同位者を置くことは最大の罪であるシルク(多神崇拝)とされます。クルアーンは第4章36節ではっきりとこう述べます。

“アッラーに仕えなさい。何ものをもかれに併置してはならない。”

次に、ムスリムはムハンマドが最後の預言者であったということを信じています。ムハンマドの後に現れ、預言者を自称する者を承認することは、イスラームそのものを否定することになります。クルアーンではこのように述べられます。

“ムハンマドは、あなたがた男たちの誰の父親でもない。しかし、アッラーの使徒であり、また預言者たちの封緘である。本当にアッラーは全知であられる。”(クルアーン33:40)

この事実は、預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)にまつわる言行集によって、より確固たるものとなります。

“イスラエルの民は預言者たちによって導かれた。一人の預言者が亡くなると、別の者が後を継いだのである。しかし、私の後にはもう預言者は現れない。ただカリフたちが私の後を継ぐのみである。”(サヒーフ・ブハーリー)

“私の共同体においては、30もの大嘘つき(ダッジャール)が生まれ、それぞれは預言者を自称するものの、私こそは最後の預言者なのであり、私の後にもう預言者はいないのである。”(アブー・ダーウード、ティルミズィー)

「ネーション・オブ・イスラーム」による間違った神学

「ネーション・オブ・イスラーム」は、上記のようなイスラーム神学の教義に則ってはいません。彼らは、神が団体の創始者である「東方からやってきた偉大な男」、マスター・W・ファード・ムハンマドの姿をして地上に現れたと信じています。彼はまず1930年の7月4日、米国において注目を集めた後、1934年の2月26日にはこつ然と姿を消し、それ以来一度も公の場に現れていません。ネーション・オブ・イスラーム(以下NOI)公式ウェブサイトは次のように断言します。

“我々はアッラー(神)が1930年7月にマスター・W・ファード・ムハンマドの姿をして現れたことを信じている。すなわち彼はキリスト教徒にとっての「メシア」であり、ムスリムにとっての「マハディ」なのである。”

1934年、「マスター」による予期せぬ雲隠れの後、NOIは「エライジャ・ムハンマド閣下」として知られるようになるエライジャ・プールによって指揮が取られました。つい最近まで、NOIはエライジャ・ムハンマドが預言者であると主張していました。

それゆえ、彼らはムスリムと自称してはいるものの、神と預言者に関するNOIの信条はイスラームとは相容れないものであることが明白です。

NOIの現指導者であるルイス・ファラカンは、15年間の入国禁止措置が裁判所によって撤回され、ようやく英国に入国出来るようになりました。

エライジャ・ムハンマド「閣下」は、NOIの「預言者」です。

NOIの信条によると、神は1930年代初頭の米国で「マスター」W・ファード・ムハンマドの姿をして現れたのです。

普遍的イスラームとは真っ向から対峙するNOIの人種差別主義

イスラームとは相容れない3番目の事項として、メディアからも最も大きく取り上げられる人種差別問題があります。NOIの現指導者であるルイス・ファラカンは、反ユダヤ(反シオニスト運動とは異なるもの)について物議を醸す発言をしていることが記録されています。その他の多くの残念な発言の中には、ユダヤ教を「どん底宗教」として言及したものもあります。

さらに、NOIは奴隷を祖先に持つ黒人たちのみによる人種差別主義団体です。正しいイスラームは、あらゆる人種に開かれている普遍宗教です。ムスリムは人種ではなく、敬虔さと良き品行に基づいて人々を区別します。クルアーンはそのことについて明白に述べています。

“人類は(もともと)一族であった。”(クルアーン2:213)

“人びとよ、われは一人の男と一人の女からあなたがたを創り、種族と部族に分けた。これはあなたがたを、互いに知り合うようにさせるためである。アッラーの御許で最も貴い者は、あなたがたの中最も主を畏れる者である”(クルアーン49:13)

そして預言者ムハンマドは、「別れの説教」において、イスラームには人種差別主義の余地がないことを明確に説明しています。

“人々よ!実にあなたがたの主は唯一であり、あなたがたの父は一人なのである。あなたがたはみなアダムという一人の父祖に属し、アダムは土から創られたのである。敬虔さ以外には、アラブが非アラブに、非アラブがアラブに優るなどということはなく、白い者が黒い者に、また黒い者が白い者に優る、などということもない。実に、あなたがたの内で最も貴い者とは、最も敬虔な者のことである。”

このこととは対照的に、NOIは反白人主義という偏見を掲げています。彼らは黒人を「神の選民」とし、白人を「ホワイト・デビル」として言及します。彼らはアメリカ黒人のため、人種差別教育を施し、異人種間結婚の禁止を実現させるため、個別の自治領土を要求しています。彼らのウェブサイトにはこうあります。

我々こそは神の選民であると信じる。

我々は歴史において、今こそが所謂「ネグロ」、そして所謂「ホワイト・アメリカン」の分離のときであると信じる。

我々は両親・祖父母が奴隷の子孫であるアメリカの人々が、この大陸であれ、もしくは他の地であれ、独立国家もしくは領土を持つことを望む。

我々はすべての黒人の子供たちが、黒人の手による教育を受けることを望む。

我々は異人種間結婚と異人種間交流が禁じられるべきであると信じる。

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「ネーション・オブ・イスラーム」の問題点(後半)

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説明: NOIを去った著名人による発言。

  • より マイケル・ヤング
  • 掲載日時 02 Mar 2015
  • 編集日時 02 Mar 2015
  • プリント数: 25
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“最も青い眼と最も白い肌をしたムスリム同胞たち”

What_s_in_a_name_-_The_Problem_with_the__Nation_of_Islam__(part_2_of_2)_001.jpg反白人主義の人種差別を愚かなことと認識し、正統派のイスラームに改宗した元NOIメンバーのなかには、マルコム・Xや、ボクシングのヘビー級世界チャンピオンのムハンマド・アリがいます。2人はこう語っています。

“(マッカへのハッジ巡礼で)異なる肌の色、人種、国籍、君主、国家の長、または貧困国からの一般人に渡るまで、皆シンプルな白い布をまとい、傲慢さや劣等感なしに神へと一心に祈る姿を見るのは、とても貴重な経験だった。それはイスラームにおける平等概念の実現だった。”(ムハンマド・アリ)

“ここムスリム世界で11日間を過ごした間、私は最も青い眼、最も明るい金髪、最も白い肌をしたムスリム同胞たちと、同じ神を崇拝しつつ、同じ皿から食べ、同じ杯から飲み、同じベッドや絨毯で休んだ。そして「白人」ムスリムたちの言葉、行い、功績からは、私がナイジェリアやスーダン、ガーナなどのアフリカ黒人のムスリムたちと同じ誠意を感じ取ったのだ。”

“唯一なる神への信仰は、彼らの精神や態度から「白人さ」を取り除いたのである。それゆえ、我々は真に平等なのだ。”

“この宗教はすべての人間を兄弟として認識する。人は皆、神の前に平等であり、人類は家族であると謳うのだ。エライジャ・ムハンマドが私を騙して利用したように、彼が「イスラーム」の名を語って人々を騙し、利用している人種差別主義を私は完全に拒否する。しかし、私が愚か者だったこと、そして私による伝道が他者に与えた影響は私自身の責任なのであり、そのことで誰も非難するつもりはない。”(マルコム・X)

ネーション・オブ・イスラームはどこへ向かうのか

たとえ、一部にイスラーム的要素を含んだNOIの提唱するライフスタイルが称賛に値するものであったとしても、現在彼らの持つ神学・教義はイスラーム的でないだけではなく、イスラームとは真っ向から相反するものです。しかしながら、良い方向に向かっている兆候がない訳ではありません。

1976年のエライジャ・ムハンマドの死後、彼の息子ウォレス・D・ムハンマド(現在の名はイマーム・ワーリスッディーン・ムハンマド)がNOIの指導者となると、団体名をムスリム・アメリカン・ソサエティに変更し、より正統派イスラームへと近づく方向性を示しました。その3年後、不満を表明したルイス・ファラカンが脱会し、エライジャ・ムハンマドの教えに忠実なNOIを再創立しました。しかし今年の2月、前立腺がんからの回復に向けた療養生活の中、熟考の機会があったのか、ウォレスの方向性と、正統派イスラームへ歩み寄る重要な宣言をしました。

“アッラーは世界への最後の啓示と共にムハンマドを遣わした。預言者ムハンマドの後に預言者はなく、クルアーンの後に啓典はないのだ。”

今後、彼による神の性質と人種問題に対しても同様の声明が出ることを期待しましょう。ルイス・ファラカンと彼のNOIが、いわゆる「ネーション・オブ・イスラーム」から正しいイスラームへの道を見出したマルコム・Xの模範に倣うことを期待したいものです。マルコム・Xはこのように表明しています。

“私はエライジャ・ムハンマドによる「拘束服」をもう着てはおらず、それを誰か他人による物と交換するつもりもない。私は最も正統な意味でのムスリムであり、私の宗教は聖都マッカのムスリムたちによって実践されているものと同じイスラームなのである。アルハムドゥリッラー。”

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