イスラームにおける環境保護(6/7):基本的自然要素の保護 ― 動植物(後半)
説明: 環境における動植物の役割に関する、イスラーム的観点。そしてこの要素の保護が、生命の存続にとっていかに重要なものであるか。後半。
- より A.バガデール博士、A.アル=サッバーグ博士、M.アル=グラヤンド博士、M.サマッラーイー博士(IslamReligio
- 掲載日時 22 Aug 2011
- 編集日時 22 Aug 2011
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預言者ムハンマドが神によって遣わされた理由は、
“…只万有への慈悲として”(クルアーン21:107)
なのです。
彼はその戒律と教えの中で、生き物に対する世話と慈悲を説きました。彼はこう述べています:
“慈悲をかける者は、慈悲遍き御方から慈悲をかけられるであろう。地上のものたちに慈悲をかけよ。そうすれば諸天の上におられる御方があなたに慈悲をおかけになるだろう。”(アブー・ダーウード、アッ=ティルミズィー収録の伝承)
彼は人類に対して、飼育下にある動物の世話を命じ、動物を餓死させた場合の罪は地獄の業火による罰であることを警告しています。1
さらに、彼は人間が腹をすかせている動物を養うよう指示し、犬の喉の渇きを癒した男性が神によってその罪を赦されたことを告げています。また人々がこう尋ねたとき、預言者はこのように言いました:
“神の使徒よ、これらの動物に良くすることに対する報奨はあるのでしょうか?”
彼は言いました:“あらゆる生き物に対する善行には、報奨があるのです。”(サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム収録の伝承)
食料確保のための狩猟、漁業はイスラームにおいて認められていますが、預言者は生き物を標的とする遊びとして生命を奪うこと2を呪っています。同様に、動物の屠殺をいたずらに長引かせること3をこのように言って禁じています:
“神は、あらゆるものに対して善行を働くよう定められました。したがって、殺すときは良い方法で殺し、屠殺するときは良い方法で屠殺するのです。あなたがたはそれぞれ刃物を磨いで、(なるべく苦しまない方法で)屠殺する動物を楽にしてやるのです。”4
また預言者ムハンマドは、蟻塚に火が灯されることを禁じました。そして、あるときある預言者が一匹の蟻に刺されたゆえに、蟻塚の蟻を全て焼き払うよう命じた出来事について、話しました。神は彼に、そのことを叱責した啓示を下しました:
“一匹の蟻があなたを刺したというだけで、あなたは神の栄光を称える集団を丸ごと破壊したのである。”(サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム収録の伝承)
また彼はあるとき、鳥から巣を奪い去った者に対して、それを奪った場所に戻し、自分の雛鳥を守ろうとしていたそれらの母鳥に返すことを命じました。5
また彼は、人間や砂漠の動物に貴重な避難所を提供する木を、むやみに切り倒すことも禁じました。6それを禁止とした目的は、神の創造物の価値ある生息環境の破壊を防ぐことであると理解することが出来ます。
預言者による命令と禁止に基づいて、イスラーム法学者たちは神の創造物は戦争においてさえ不可侵性(フルマ)を有していると裁きます。預言者は蜜蜂や、いかなる家畜の殺害をも禁じており、それらの殺害は神の言葉通り、腐敗の表れであるとしています:
“かれらは背を向けるやいなや、地上に悪を広めることにつとめ、収穫物や家畜を荒し廻る。だがアッラーは邪悪を愛されない。”(クルアーン 2:205)
“それらの動物が持つ不可侵性は、女性や子供が持つものと同じものなのです。”7
動物が一定の法的権利を持つことは、イスラーム法の特色であり、それは法廷と社会監査局によって施行されています。あるイスラーム法学者はこのように書いています:
“人間の処遇に対する家畜・動物の権利:それは人間が、たとえそれらの動物が加齢したり、病気になったりして人間の役に立たなくなったとしても、必要とする餌を与え続けること。それらの動物が耐えられない程の負担をかけないこと。たとえ同種・他種であれ、骨折、頭突き、外傷などのいかなる危害をも与え合うような動物同士を同居させないこと。屠殺が必要なときは最善を尽くして屠殺し、完全に息絶えて冷たくなるまでは皮を剥いだり骨を折ったりしないこと。それらの両親の目前で、子供を屠殺しないこと。それらを個体別に分け隔てること。それらの寝床や水場を清潔に保つこと。交配期にはそれらのつがいを引き合わせること。狩猟で得た獲物を捨てないこと。そして骨を破壊するようなもので撃たないことと、食用が禁止になるほどの破壊的な方法で殺さないことである。”8
イスラームはこれら動植物の創造物に対し、二通りの視点をもって捉えます:
1.それぞれが権利を有する生命体であり、神を賛美し、その御力と叡智を称える存在である、という視点。
2.人間と他の創造物に奉仕し、世界の発展という重要な役割を担う存在、という視点。
それゆえ、それらを保護し発展の手助けをするのは、それら自身の福利と相互利益のため、また人類にとってのかけがえのない生きた資源としての価値であるという理由から、必ず守るべき義務なのです。
Footnotes:
1 サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム
2 サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム収録の伝承。
3 サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム収録の伝承。
4 サヒーフ・ムスリム、アブー・ダーウード収録の伝承。
5 アブー・ダーウード収録の伝承。
6 アブー・ダーウード収録の伝承。
7 ムワッファクッ=ディーン・ブン・クダーマ著『アル=ムグニー』から。
8 イッズッ=ディーン・ブン・アブドッ=サラーム著『カワーイド・アル=アフカーム・フィー・マサーリフ・アル=アヌアーム』から。このくだりは、人間と他の生物をそれぞれ法的責任者とみなして権利を与え、その法的・道徳的主張について議論する、フクーク・アル=イバード(しもべの権利)に該当します。動物の権利と主張については人間のそれよりも範囲が狭く、人間の生命・資産の保護、食料確保のような詳細な規制はありませんが、イスラームによって動物と人間の双方に権利・主張が与えられているという概念はとても重要なことです。
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