イスラームと聖母マリア(1/3)

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説明: 聖母マリアに関するイスラームの見解:第1部:マリアの幼少期。

  • より M. Abdulsalam (IslamReligion.com)
  • 掲載日時 06 Dec 2009
  • 編集日時 12 Dec 2009
  • プリント数: 380
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イエスの母マリアは、イスラームにおいて非常に重要な位置を占めています。彼女はその敬虔さと献身性により、神によって歴史上最高の女性の一人に数えられています。

“天使たちがこう言った時を思い起せ。「マリアよ、誠に神はあなたを選んであなたを清め、万有の女人を越えて御選びになられた。マリアよ、あなたの主に崇敬の誠を捧げて平伏(サジダ)しなさい。立礼(ルクーウ)するものと一緒に立礼しなさい。」(クルアーン3:42−43)

また神は、彼女を模範的女性として示しています:

“またわれは自分の貞節を守ったエリ(イムラーン)の娘マリア(の体内)に、わが天使(ガブリエル)によって魂を吹き込んだ。彼女は、主の御言葉とその啓典を実証する、敬虔な(しもべの)一人であった。”(クルアーン66:12)

彼女は、処女懐胎によってイエスを身ごもるという奇跡に相応しい女性でした。彼女はその篤心と純潔さで知られていました。そうでなければ誰も、処女でありながら出産をしたという彼女の主張を信じなかったでしょう。イスラームはそれを真実であるとしています。彼女の特別な性質は、幼少時代からの様々な奇跡によって証明されています。以下に、神が啓示したマリアにまつわる素晴しい物語を追って行きましょう。

マリアの幼少期

“本当に神は、アダムとノア、そしてアブラハム一族の者とエリ一族の者を、諸衆の上に御選びになられた。彼らは、一系の子々孫々である。神は全聴にして全知であられる。エリの妻(ハンナ;またはアン、アンネ、アンナ)がこう(祈って)言った時を思え、「主よ、私は、この胎内に宿ったものを、あなたに奉仕のために捧げます。どうか私からそれを御受け入れ下さい。本当にあなたは全聴にして全知であられます。」(クルアーン3:33−35)

マリアは、エリと妻ハンナの間に生まれました。エリはダビデの子孫であり、その家系はアダム、ノア、アブラハム(彼らに神の祝福と平安がありますように。)まで遡る預言者の一族です。上記の節で述べられているように、彼女は選ばれた一族であるアブラハムからの、同じく選ばれた血筋であるエリの元に生まれました。ハンナは子供を欲していましたが不妊に悩んでおり、もしも神が彼女に子供を授けてくれるのならば、その子の生涯を寺院における神への奉仕に献身させることを誓っいました。神はその祈願を聞き届け、彼女は懐妊しました。しかし生まれた子供が女児だったことに彼女は落胆しました。習慣上、バイトル=マクディス(エルサレム)で奉仕をするのは男性のみだったのです。

“それから出産の時になって、彼女は言った。「主よ、私は女児を生みました男児と女児は同じではありません。」”

彼女が悲しみをあらわにすると、神は彼女を譴責して言いました:

“神は、彼女が生んだ者を御存知であられる。”(クルアーン3:36)

神はハンナの娘マリアを、処女懐胎によるイエス(彼に神の称賛あれ)の出産という、創造における最も偉大な奇跡の一つとしてお選びになったのです。ハンナは彼女の娘をマリア(アラビア語でマルヤム)と名付け、彼女とその子供を悪魔から護られるよう、神に祈願しました:

“「私は彼女をマリアと名付けました。あなたに御願いします、どうか彼女とその子孫の者を、呪うべき悪魔から御守り下さい。」”(クルアーン3:36)

神はその祈願を叶え、彼女の娘マリアとその息子のイエスに対し、彼ら以前にもそれ以後にも例を見ないような特別な恩恵を与えました。それはこの2人が出生の際、悪魔に触れられることがなかったということです。預言者ムハンマドはこう言っています:

“生まれて来る赤ん坊が泣き叫ぶのは、悪魔に触れられるからであるが、マリアと彼女の息子(イエス)だけは別である。”(アハマド)

ここでキリスト教の理論である“無原罪懐胎”説との類似性をすぐに見出すことが出来ますが、そこには大きな違いがあります。イスラームは“原罪”を説かないため、彼らに悪魔の接触がなかったのは“無原罪懐胎”によるためではなく、マリアと彼女の息子イエスに与えられた神の慈悲ゆえであるとします。他の預言者同様、イエスは大罪を犯すことから守られていました。そしてマリアに関しては、信仰に篤い者たちのみに許される神からのご加護とお導きを授かっていたのです。

“それで主は、恵み深く彼女を嘉納され、彼女を純潔に美しく成長させ、ザカリヤに彼女の養育をさせられた。”(クルアーン3:37)

マリアの誕生に際し、彼女の母ハンナは彼女をバイトル=マクディスに連れて行き、モスク内にいた人々に彼女の後見を引き受けるよう頼みました。彼らは彼女の一族の偉大さと篤心さを知っていたため、誰がその任務を受けるかで論争となりました。最終的に彼らはくじを引くことに決め、その結果選ばれたのが預言者ザカリヤだったのです。彼女は彼の保護の下で養育されることになりました。

マリアに起こった奇跡と天使たちの訪問

預言者ザカリヤはマリアが成長するにつれて、彼女の持っている特別な性質に気付き始めました。それは彼女の周りで起こった数々の奇跡のためでした。マリアは成長すると、神への崇拝に専念出来るよう、モスクの中の個室を与えられました。そしてザカリヤはマリアの部屋を訪れる度、そこに沢山の果物を見出したのです。

“ザカリヤが、彼女を見舞って聖所に入る度に、彼女の前に食物があるのを見た。彼は言った。「マリアよ、どうしてあなたにこれが(来たのか)。」彼女は(答えて)言った。「これは神の御許から(与えられました)。」本当に神は御自分の御心に適う者に限りなく与えられる。”(クルアーン3:37)

天使たちは幾度となく彼女を訪問していたのです。神は私たちに、天使たちが彼女を訪問したこと、そして人類における彼女の祝福された地位をこう教えてくれます:

“天使たちがこう言った時を思い起せ。「マリアよ、誠に神はあなたを選んであなたを清め、万有の女人を越えて御選びになられた。マリアよ、あなたの主に崇敬の誠を捧げて平伏(サジダ)しなさい。立礼(ルクーウ)するものと一緒に立礼しなさい。」(クルアーン3:42−43)

一部の人々はこれらの天使による訪問、そして彼女が選ばれた女性であるという事実を鑑みて、彼女が女預言者であるという見解を示しています。この問題は論争の的になっていますが、もし彼女がそうでなかったとしても、イスラームは依然として彼女の篤心と神への献身、そしてイエスの処女懐胎という奇跡によって、彼女を創造物における最高の女性であると見なしているのです。

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イスラームと聖母マリア(2/3)

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説明: マリアに関するイスラームの見解:第2部:マリアへの受胎告知。

  • より M. Abdulsalam (IslamReligion.com)
  • 掲載日時 06 Dec 2009
  • 編集日時 12 Dec 2009
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マリアへの受胎告知

神は、天使たちがマリアのもとを訪れ、彼女に懐妊の吉報と生まれて来る子供の地上における栄誉、そして彼が行なうであろう奇跡を伝えた情景をこう描写します:

“また天使たちがこう言った時を思え。「マリアよ、本当に神は直接ご自身の御言葉で、あなたに吉報を伝えられる。マリアの子、その名はイエス・キリスト、かれは現世でも来世でも高い栄誉を得、また(神の)側近の一人であろう。彼は揺り籠の中でも、また成人してからも人々に語り、正しい者の一人である。彼女は言った。「主よ、誰も私に触れたことはありません。どうして私に子が出来ましょうか。」かれ(天使)は言った。「このように、神は御望みのものを御創りになられる。かれが一事を決められ、『有れ。』と仰せになれば即ち有るのである。また主は啓典と英知と律法と福音とを彼に教えられる。”(クルアーン 3:45−48)

これは、バイブルで述べられている状況と酷似しています:

“マリア、怖がることはない。あなたは神から恵みを受けたのです。ご覧なさい。あなたは身ごもって、男の子を産みます。名をイエスとつけなさい。”(ルカの福音書 1:30−31)

彼女は驚いて言いました:

“どうしてそのようなことになりえましょう。私はまだ男の人を知りませんのに。”(ルカの福音書1:34)

この出来事は、その敬虔さと献身性で知られていた彼女にとっての大きな試練でした。彼女は、人々が自分に対して不貞の疑惑を持つであろうことを予感しました。

神は別のクルアーンの節で、マリアがイエスを産むというガブリエルによる受胎告知に関する詳細を更に詳しく描写します:

“またこの啓典の中で、マリア(の物語)を述べよ。彼女が家族から離れて東の場に引き籠った時、彼女は彼らから(身をさえぎる)幕を垂れた。その時われはわが聖霊(ガブリエル)を遣わした。かれは1人の立派な人間の姿で彼女の前に現われた。彼女は言った。「あなた(ガブリエル)に対して慈悲深き御方の御加護を祈ります。もしあなたが、主を畏れておられるならば(私に近寄らないで下さい)。」かれは言った。「私は、あなたの主から遣わされた使徒に過ぎない。清純な息子をあなたに授ける(知らせの)ために。」(クルアーン 19:16−19)

あるとき時マリアが所用のためにモスクを出たとき時、大天使ガブリエルが男性の姿でマリアを訪れました。彼女はその男性があま余りに接近してきたために恐怖し感を抱き、彼に対する神のご加護を求めました。するとガブリエルは、彼女が最も純粋な子供をやがて最も純粋な子供を身ごもることを告げ知らせるため、自らが神によって遣わされたことを伝えました。驚きのあまり、彼女は驚きのあまり、声をあ上げてこう言いました:

“彼女は言った。「未だ且つて、誰も私に触れてはいません。また私は不貞でもありません。どうして私に息子がありましょう。」”(クルアーン 19:19−20)

ガブリエルは、それが既に定められていることであり、全能の神にとっては容易いことであると彼女に教えました。神は、イエスの誕生は神の全能性の印であり、アダムを両親の存在なく創造したのと同じようにイエスを父親の存在なしに創造したのだと述べます。

“かれ(天使)は言った。「そうであろう。(だが)あなたの主は仰せられる。『それはわれにとっては容易なことである。それで彼(イエス)を人々への印となし、またわれからの慈悲とするためである。(これは既に)アッラーの御命令があったことである。』」”(クルアーン 19:21)

神はイエスの魂を、大天使ガブリエルを介してマリアに吹き込み、彼女はイエスを身ごもりました。神は別の章においてこう述べています:

“またわれは自分の貞節を守ったエリ(イムラーン)の娘マリア(の体内)に、わが霊(ガブリエル)をもって吹き込んだ。彼女は、主の御言葉とその啓典を実証する、敬虔な(しもべの)一人であった。”(クルアーン 66:12)

懐妊の兆候が誰の目にも明らかになるにつれ、マリアは人々がどういう反応を示すかとても心配になりました。そしてその知らせが瞬く間に広まることは避けられず、人々は彼女の不貞を訴え始めました。尚キリスト教では彼女がヨセフと結婚し、それによりマリアは苦悩したと信じますが、イスラームでは彼女がヨセフと結婚をしてはおらず、また同様に彼と連れ添ってもいなかったことを確証します。マリアは自分が婚姻関係を結んでいなければ、人々が彼女の懐妊から導き出すであろう唯一の論理的結論を知っていました。マリアは人々から離れ、遠隔の地へと赴きました。神はこう述べています:

“こうして、彼女は彼(息子)を宿したので、遠い所に引き籠った。分娩の苦痛は彼女をナツメヤシの幹に赴かせた。”(クルアーン 19:22−23)

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イスラームと聖母マリア(3/3)

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説明: マリアに関するイスラームの見解:第3部:イエスの誕生、そしてイスラームがマリアに払う敬意の念について。

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イエスの誕生

彼女は分娩に際して、精神的にも肉体的にも極度の苦痛の中にありました。マリアは他の女性と変わらない妊娠期間を過ごし、他の女性がするのと同じように出産しました。キリスト教とユダヤ教では、月経と陣痛はイブの罪[1] によりもたらされた呪いであるとします。またキリスト教では、マリアは陣痛の苦しみを味わわなかったとします。一方イスラームではそういった信仰、そして‘原罪’説を認めず、誰も他者の罪を背負うことはないと強調します:

“各人はその行いに対する以外に、(罪の)報酬はないのである。重荷を負う者は、他の者の重荷を負わない。”(クルアーン6:164)

それだけでなく、クルアーンと預言者ムハンマド(彼に神の称賛あれ)はいずれもイブが木の実を食べたこと、または彼女がアダムをそそのかしたということには一度も言及していません。

“その後悪魔〔シャイターン〕は彼らに囁き…かれは両人を欺いて堕落させた。彼らがこの木を味わうと、その恥ずかしい処があらわになり、2人は園の木の葉でその身を覆い始めた。”(クルアーン embassy 7:20−22)

マリアは、自らが創造されなければ良かったと思う程の激しい苦痛に襲われ、こう叫びました:

“「ああ、こんなことになる前に私は亡きものになり、忘却の中に消えたかった。」”(聖クルアーン 19:23)

マリアの激痛が頂点に達した出産の直後、新生児のイエス(彼に神の称賛あれ)は彼女の下方から奇跡的に彼女をねぎらい、彼女に対する神のご加護を約束したのです:

“その時(声があって)彼女を下の方から呼んだ。「悲しんではならない。主はあなたの足もとに小川を創られた。またナツメヤシの幹を、あなたの方に揺り動かせ。新鮮な熟したナツメヤシの実が落ちてこよう。食べ且つ飲んで、あなたの目を冷しなさい。そしてもし誰かを見たならば、『私は慈悲深き主に、斎戒の約束をしました。それで今日は、誰とも御話いたしません。』と言ってやるがいい。」”(クルアーン19:24−26)

マリアの不安はなくなりました。これはイエスによる最初の奇跡でした。彼は誕生と同時に母親を安心させたのです。そして彼女が抱く新生児を目にした人々は、彼女を非難してこう言いました:

“「マリアよ、あなたは何と大変なことをしてくれたのか。」”(クルアーン19:27)

彼女はただイエスを指し示しました。神が天使を遣わして彼女に既に告知していたように、イエスは奇跡によって話し始めたのです。

“彼は揺り籠の中でも、また成人してからも人々に語り、正しい者の一人である。”(クルアーン3:46)

イエスは人々にこう語りました:

“私は、本当に神のしもベです。かれは私に啓典を与え、また私を預言者になされました。またかれは、私が何処にいようとも祝福を与えて下さいます。また生命のある限り礼拝を捧げ、喜捨をするよう、私に御命じになりました。また私の母に孝養を尽くさせ、高慢な恵まれない者にはなされませんでした。また私の出生の日、死去の日、復活の日に、私の上に平安がありますように。”(クルアーン19:30−33)

ここから、彼を殺そうと企むユダヤ人の姦計からの回避と、人々へ神のみへの崇拝を呼びかけるという彼の生涯の努力の物語が始まったのです。

イスラームとマリア

ここまでは、イスラームがいかにマリアを重要視するかを述べてきました。イスラームは彼女が創造された女性の中で最も完全であると見なしています。アダムを除く全預言者には母親がいたにも関わらず、クルアーンでマリア以上に強調されている女性はいません。クルアーンの全114章において、第19章の“マルアム(マリアのアラビア語)”章には彼女の名前が付けられていますが、人の名前が章の題名となっているのは彼女も含めて8人だけです。またクルアーン第3章では、彼女の父親のイムラーン(エリのアラビア語)の名が付けられています。またマルヤム章、イムラーン章は最も美しい章の一つとしても知られています。更にマリアは、クルアーンで唯一名前を言及されている女性でもあります。預言者ムハンマドはこう言っています:

しかしこれまで述べて来た数々の徳にも関わらず、マリアと彼女の息子イエスはただの人間であり、人間の持たない特徴を持ち合わせることはありませんでした。二人はともに創造物であり、この世に“生まれて”来たのです。二人は神の特別な恩恵によって大罪を犯すことはありませんでしたが、小さな間違いからは免れませんでした。マリアを無謬[2] とするキリスト教と異なり、イスラームではそういった完全な性質は神以外に存在しないとします。

またマリアにも同様のことが当てはまります。彼女の周りには様々な奇跡が起こりましたが、彼女の死後にはそれが止まりました。また「マリアのおかくれもの (Transitus Mariae)」などの聖書外典に代表される、人々によるマリア出現の目撃談、彼女に対する祈願によってもたらされた助けなどの主張は、唯一かつ真実の神への崇拝を妨害することが目的の、サタンによる幻影なのです。アヴェ・マリアやロザリオなどに代表される祈祷や称賛、または教会による献身やマリアにまつわる数々の祝祭日は、人々が神にそれ以外のものを配し、神以外のものを称賛することを助長するのです。これらの理由により、神のみを崇拝し、かれ以外の崇拝を拒否するという神の教えの真髄を守るため、イスラームはあらゆる種類の宗教的逸脱や墓地での崇拝場の建築などを禁じているのです。

マリアは神のしもべであり、神によって最も偉大の預言者の一人であるイエスの誕生という奇跡をもたらす母として選ばれた、最も純潔な女性でした。彼女は敬虔さと貞操の正しさで知られ、そしてまた今後もその栄誉を保ち続けるのです。彼女の物語は預言者ムハンマドの登場によりクルアーンにおいて啓示されましたが、それは完全な形のまま審判の日まで不変のものであり続けます。



Footnotes:

[1] 創世記(3:16)参照。

2[2] “Chinese language”,36頁

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